CGNでは、コーディリエラ山岳地方の環境保全と先住民族の生計向上を同時に実現できるプロジェクトとして、アラビカ・コーヒーのアグロフォレストリー(森林農法)による栽培指導と苗木の支給を2006年よりコーディリエラ地方の多くのコミュニティで行っています。
先住民の人たちが苦労して栽培してきたコーヒーが安定した収入につながるように、収獲期を迎えたコミュニティで、品質のいいコーヒー豆を生産するための収穫後の精選、乾燥,選別、貯蔵方法を伝えるトレーニングを行っています。
2013年~2015年には,ベンゲット州国立大学(BSU)に留学していたコーヒー専門家の山本博文氏の協力を得て、コーヒー栽培地で技術指導をみっちりと行いました。品質管理をできる栽培地の人材育成プロジェクトも行い、コーヒーのに努めています。
また、アグロフォレストリーによるコーヒー栽培が環境負荷が少ないことを示すために、野鳥調査の専門組織と提携してコーヒー栽培地とその周辺に生息する野鳥の調査を行っています。
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■2015年4月~2018年3月
■平和環境もやいネット/公益財団法人日本国際協力財団助成
東ティモールでコーヒーの品質向上をサポートした経験のあるNPO法人「平和環境もやいネット」がその経験を生かして、コーディリエラ山岳地方のコーヒー栽培農家が自助努力により品質のよいコーヒーを生産するためのプロジェクトを実施しました。CGNはパートナーとして事業地での活動をサポートしました。
品質に対する意識を高め、世界基準の品質に対するスタンダードを拡散するため、ベンゲット・コーヒー・カウンシル(BCC)やマウンテン州DTI(通商産業オフィス)と連携し、品質基準の評価方法についての講習を行いました。一方で、山岳地方の遠隔地に位置するコーヒー栽培コミュニティで農家を対象とした実践的なワークショップを実施。収穫後の精選方法に限らず、病気・害虫対策、古い木のメンテナンス法などもトピックスに加え、あらゆる側面からコーヒーの品質を上げるためのトレーニングを行いました。農家に配布する加工やメンテナンスに関するハンドブックも3冊制作し、栽培農家に配布しました。
プログラムでは農家同士の学びに重きを置き、コーディリエラ山岳地方の農家同士の交流をはじめ、東ティモールのコーヒー農家との交流も行いました。2016年8月にはベンゲット州キブンガン町、カパンガン町、マウンテン州バーリグ町の栽培農家が東ティモールのNPO法人ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)のパートナー農家とNPO法人パルシックの加工施設にて研修を受けました。とくに収穫後の加工に使う皮むき器の作り方について、学びました。2017年12月には東ティモールからPWJのコーヒー栽培指導者とパルシック、Permatilの二つのNGOのスタッフがコーディリエラ地方を訪問しコーヒー生産者を対象にして講習会を行いました。
3年間で講習会を開催したコミュニティは以下です。
イトゴン町(アンプカオ、グマッダン)、キブンガン町(サグパット)、ボッコド町(カラオ)、カパンガン町(サグボ(ティモック & ビレン)、ポブラシオン、ルブエグ(ポキン))、トゥブライ町(ダクラン、アンバサダー(マムヨッド、ナルセブ、コロス)、ブギアス町(バクロンガン・スールBaculongan Sur)、マンカヤン町(カビテン、タビオ)、マウンテン州バウコ町(ビリ)、サバンガン町、ボントク町、カリンガ州ルブアガン町(マビロン)、パシル町。
3年間を通して栽培・加工技術の専門家&スーパーバイザーとしてとして山本博文氏が指導に当たってくれました。
また、地域にコーヒーの品質を評価できる人材を育成するための香味に関するトレーニング、カッピング・ワークショップも行い、CGNの専門家であるハミアス氏がCQI(Coffee Quality Institute=コーヒー品質協会)のQグレーダーライセンスを取得しました。
■2016年7月~2019年3月
■WE21ジャパンーJICA横浜
国際協力機構横浜国際センター(JICA横浜)と認定NPO法人「WE21ジャパン」の草の根技術協力事業に、CGNは現地協力団体として参加。
コーヒー栽培に力を入れているトゥブライ郡では、自治体の環境事務所が中心となって大量のコーヒーの苗木を配布し、植樹を推進してきました。収穫されたコーヒー豆が住民の生計向上につながり、貧困が軽減されることを目的に、52店舗のリユース・リサイクル・チャリティショップを組織するWE21グループ(神奈川県)が、その経験を活かし、コーヒー農家の組織強化の方法を指導しました。
年間計画の立案と実施により、各生産者組織が自立した活動を行えるよう指導した他、インドネシアやフィリピンの他地域の先進的なコーヒー生産者組織を訪問し、組織化について学ぶ経験交流を行いました。また、組織で品質向上を図るために必要な人材育成,収穫したコーヒー豆の皮むき機パルパーや乾燥台の支給を行いました。さらに,各組織に配置された品質管理担当者が、生豆の状態までの品質管理を行えるよう技術指導を行いました。農家同士の交流を行った結果,組織間のネットワークづくりの重要性を強調され、生産者たちから組織間ネットワーク構想が提案されました。
■2019年10月~2020年3月
コーヒーの生産量が増加しているカパンガン町サグボ村のダイヨコン農業組合(DFAC)を受益者に、収穫後の加工機器の支給、精選技術のトレーニング、フェアトレード認証取得に向けた組織強化プロジェクトを行いました。
1. 小さな精選所づくりと精選機器の支給
小さなマニュアルの果肉除去機(パルパー)を3台支給しました。コーヒーチェリーを水につけて浮いてくるものをのぞいたり、皮をむいたパーチメントを洗ったりするための容器、そのパーチメントに付着しているミューシレージとよばれる粘質を発酵させるときに使う蓋つきの容器(大きめの蓋つきポリバケツみたいなもの)も支給しました。さらに、発酵したミューシレージを洗い流した後のパーチメントを乾燥させる乾燥箱(トレイ)と、乾燥台に使うプラスチック製のシートなどの資材も支給しました。
2.精選技術トレーニング
機器・資材支給と同時に、支給した機器を使って品質のよいコーヒーを作るためのトレーニングを開催しました。技術指導には、アジア各国のコーヒー新興国で農家目線できめ細かい栽培指導を行っている山本博文さんが、忙しい合間を縫って二度,足を運んでくれました。
3.組合の組織強化セミナー
支給された機器は、組合が共同で使用する必要があります。ダイヨコン農業組合は、コープストア(組合のショップ。日用品や食料品を販売しています)の経営が主な活動です。今回新たに加わるコーヒーの精選を組合として行うための組織強化プログラムを行いました。組織をどのように潤滑に運営していけばいいか、いま現在の組織のあり方には何が欠けているか、どうすれば組織がさらにサステナブルなものになるか、マーケットを広げるための国際フェアトレード認証申請のためには何が必要かなどが講習のテーマでした。
講師には、フィリピンの政府機関である組合開発機構(CDA)の百戦錬磨の専門家さん、そして・フェアトレード・ネットワーク・アジア太平洋地区Network of Asia & Pacific Producers (NAPP)の東南アジアの生産者認証担当で各国を飛び回っているエリカ・シアソン女史が来てくれました。
■2023年11月~2025年10月
アグロフォレストリーによるコーヒー生産は、東南アジアで進む焼き畑による森林破壊を防ぐための手段のひとつである。しかし、アジアにおけるアグロフォレストリー・コーヒーの認知度は低く、十分に高い値で販売できないことは農家が焼き畑からアグロフォレストリーに転換できない原因にもなっている。本事業では日本のモニタリング調査で使われている野鳥調査の手法を使ってアグロフォレストリーの生物多様性上の価値を見える化し、日本などのコーヒー消費者に環境配慮型の製品を選択してもらえるようにすることを目指した。特に、日本と東南アジアをつなぐ要素として、日本で夏に子育てをする小鳥類が越冬のためにアグロフォレストリー農園を利用していることに着目して、野鳥を付加価値としたコーヒーのブランド化を行った。さらに、コーヒーの生産技術を高めるために、フィリピンとインドネシアの2地域のコーヒー農家が相互に訪問して学び合いを行った。
具体的には、野鳥の調査では、フィリピン・ルソン島のタジャン町内のアグロフォレストリー農園23地点において野鳥の種類や数の違いを調べ、環境による比較を行った。2024年の4月、12月、2025年の2月に、各地点で半径50m以内に出現した野鳥を、主に鳴き声で識別して記録している。調査地点でのカウント時間以外に観察できた野鳥もすべて記録した。
農家の相互交流の初回は、2025年2月にインドネシアのアグロフォレストリーコーヒー組合「Klasik Beans」に所属するバンドン周辺の農家がフィリピンのタジャンを訪問した。インドネシアは世界有数のコーヒー産地であり、生産と販売について高いノウハウをもっているので、コーヒー生産を始めたばかりのタジャン農家の学びになる情報を多く提供してもらえた。コーヒーは収穫や焙煎を体験するツーリズムの素材にもなるので、コーヒーそのものに加えてツーリズムによる副収入も期待できる。両国の農家はエコツーリズムを体験できるフィリピンのSagadaとEl Kabayoを訪問して、地元にお金が落ちるツーリズムの仕組みを学んだ。2025年8月には、第2回交流会としてタジャン農家がバンドンを訪問し、郊外に点在する3箇所のコーヒー農園を見学した。大規模な農園ではコーヒーの栽培やコーヒービジネス全般についての説明をしてもらい、遠隔地の村落にある小さな農園ではコミュニティーが協力してコーヒー生産に取り組むようすを学ぶことができた。
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野鳥調査では、フィリピンのタジャン町のアグロフォレストリー農園で111種を確認し、そのうち11種が日本、中国、ロシアなどの中高緯度地域からの渡り鳥であり、アグロフォレストリー農園が渡り鳥の越冬地になっていることが分かった。農園環境では、多品種が植えられている森林、古い松林に野鳥が多く、単一樹種の植林にはやや少ない結果になった。コーヒー栽培を始めるときは単一種の植林になる場合があるが、後年は樹種を増やしていくことが野鳥の保全には望ましいことが分かった。アグロフォレストリーによるコーヒー生産については、世界有数のコーヒー産地であるインドネシアの栽培技術や販売システムが優れているため、コーヒー栽培をはじめてまもないタジャンの農家が学ぶことが多く、苗の育て方から、植え付け、収穫、その後の生成プロセスまで、詳しく学ばせてもらった。私たちからは、野鳥を付加価値として農産物を販売することについて、日本のコウノトリ米やトキ米の例を挙げて解説を行った。今後はタジャン農家自身が目標を定めて、森林環境を守りながらコーヒーの質と量を向上させていってもらいたい。プロジェクト終盤の2025年9月には、タジャン町のアグロフォレストリーに日本からの渡り鳥がいることをブランドにして、日本で「渡り鳥が冬を過ごす森のコーヒー」を発売することができた。このコーヒーは通販でも購入ができる。
https://coffee.bird-research.jp/top/coffeeshops
焼き畑による森林破壊は熱帯地域の広い範囲で問題になっている。こうした地域の標高の高い場所ではコーヒー生産を行っていることが多い。日本と東南アジアが渡り鳥によってつながっていることは、日本人が現地の環境問題に関心を持つ理由になるため、本プロジェクトで実施した野鳥調査による生物多様性の見える化ととコーヒー生産の改善は、他の地域でも焼き畑を減らし、地域住民の生活を改善する手法として役に立つと考えている。
(トヨタ財団のプロジェクトサイトより)